日本食品免疫学会
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アレルギーワクチン米の開発

高岩文
雄生物研・遺伝子組換え作物開発センター

 花粉症をはじめとするアレルギー患者の増加が危惧されている。2008年の調査では、日本人の約35%が何らかのアレルギー疾患で苦しんでいる。こうしたアレルギー疾患に対して、唯一の根治的治療法は減感作療法であるが、治療に要する期間(3〜5年)、通院の煩わし、注射による痛み、アナフィライシーショックの可能性から、この治療法はあまり用いられず、抗アレルギー剤やステロイド剤などを用いる対処療法が一般的治療法となっている。
 そこで我々は、従来の減感作療法で問題となっている上記の課題を克服する方法として、アナフィラキシーショックの起きない安全な抗原を日本人が主食としているコメに蓄積させ、腸管の粘膜免疫組織が示すコメタンパク質に対する免疫寛容誘導の原理を利用すれば、コメに蓄積させたアレルギー抗原に対してもコメをたべることで粘膜免疫寛容を誘導でき、注射による苦痛や通院の煩わしさから解放された画期的治療法となるのではないかと考えた。しかし、一般にワクチンタンパク質を口から投与する場合、免疫担当細胞が集積している腸管関連リンパ組織(GALT)に到達する前に、胃内における強酸下の環境やペプシン等の消化酵素により分解を受けて、抗原特異的免疫反応を的確且つ有効に誘導することはできない。この問題の克服には、投与する抗原量を高める発現手法や腸管粘膜免疫組織への効率的なデリバリーの開発が不可欠となる。
 そこでこうした問題に対応できる実用的な経口型のアレルギーワクチン米を開発するため、まずイネ種子胚乳で高度に発現している遺伝子のプロモーターを単離して、ワクチン遺伝子をイネの種子に特異的に発現させる系を開発した。さらに、発現させた目的遺伝子産物を高度かつ安定的に蓄積させるために、種子に特異的に存在するタンパク質顆粒への輸送集積や、種子発現に適して導入遺伝子のコドンの最適化を進めた。このようにして作出した組換え種子に蓄積させたワクチン抗原は、室温下での長期保存性が他の植物組織より優れている。特に、コールドチェイン(冷蔵保存)や注射器フリーのワクチンとしてその利点は大きい。また、他の植物組織に存在しない貯蔵タンパク質の蓄積されているタンパク質顆粒を利用することで、より安定的かつ高度に蓄積が可能になり、また消化酵素に対する耐性も付与されている。特にイネ種子に見られる小胞体由来のタンパク質顆粒に蓄積させた場合、また消化酵素に耐性に優れており、ワクチンを蓄積・搬送する自然の経口デリバリーとして優れている。実際、ワクチンを含む小胞体由来のタンパク質顆粒が腸管関連リンパ組織の抗原の取り込み細胞であるM細胞からとりこまれていることが観察されている。また抗原タンパク質そのものより、小胞体由来のタンパク質顆粒に蓄積させることで極めて低濃度で免疫反応を誘導できることが示された。
 一方、アレルギーの原因となる抗原を安全にする方法として、T細胞エピトープや立体構造が改変する方法がある。我々はスギ花粉抗原から由来する10〜20アミノ酸からなるT細胞エピトープやダニ抗原から由来するIgEとの結合性を低下させた立体構造改変型抗原や部分抗原などを上記手法で高度に蓄積させた組換え米を開発してきた。これらの米をモデルマウスに経口投与しておくと、普通の米を食べさせたマウスに比べ、特異的抗原に対して免疫寛容が誘導されており、特異的IgEやヒスタミンや炎症などが緩和させることが示されてきた。これらの知見より、コメを利用したアレルギーの予防や治療の可能性が高く、新規のアレルギー治療戦略として有効ではないか考え実用化を進めている。

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